ジェンネからまた起点になる港町に戻った日のこと。
悪人顔だけど親切な旅行会社のIssaさんがランチに呼んでくださり
彼の大豪邸に招待されました。
大理石でできた素晴らしいおうちには何人もお手伝いさんがいらっしゃり「自由にくつろいで、食べてねー。どうだったー?ドゴン。よかったかなー?」などと喋ってくる。
彼は私たちを高級車で迎えにきてくれ、自分の家に連れて行ってくれたのだけど、途中路地にせり出して野菜とかモノを売っている人たちがいて、その人たちのせいで車が通れない!!!と激怒して車から降り、
まるで映画のワンシーンのように、その屋台を蹴り飛ばしていた光景を思い出していた。
まさか、そんな悪役がするようなことを、こんな悪役の顔した人がするなんて!!!!めっちゃ、そのまんまやんか!!!と思って見入ってしまった。もうその屋台のおばちゃんとおっちゃんが可哀想すぎて見てられなかったのだけど。そんなもんだから、お呼ばれしたランチは美味しかったのだけれど美味しく感じなくて
大理石の端っこぐらいのピースは私たちの高価なドゴンツアーからくるのかしら?とか、ちゃんとマサユキにそれなりの給料は行っているのだろうか?とか余計なことを考えてているとさらに居心地が悪くなってきて、早く帰りたくなってきた。
「ねねヤン、車で送っていくけれど」と言われ
「いえ、滅相もありません。私、運動しながら帰ります!道もだいたいわかるし!」と断ってランチをいただいて早々に豪邸をでた。Tさんはこれから行くブルキナファソに持って行くアイテムを貝肉ことになり、別行動になった。
宿のカンプマンに戻るまで、歌いながらモプティの日常風景を楽しんでいた。

ジキボンボ出身だというパン屋さんとか。ああ、マリの日常だなーという感じで。
道にはサッカーボール(とは言っても、もうボロボロすぎて原型がないけど)を蹴る子供達がいて。ああ、平和や。豪邸よりこういうところが落ち着くよ。と歩いていると・・・・
「ボンジュール!ハロウ!!!!コニチワ!コニチワ!」と優しい声がする。
後ろを振り返ると車椅子の青年がにっこりしているじゃないか。
「は、ハロウ!こんにちは!」というと
英語で優しく「日本から来ましたか???」と聞いてくる。
「あ、そうですが・・・・」と挙動不審になってしまった。
よく茶化されたり、明らかに日本人なので買ってくれ攻撃にあったり
そのキーホルダーくれとか、カバンくれとか、言われ続けていたので
私の頭は その優しそうに笑う車椅子の青年にバグっていた。
「お茶しませんか???」と彼はいう。
・・・・・・お茶飲む?
・・・・・・お茶飲む???
え、絨毯かなんか、売りつけるの???
「Cafe Verdeという美味しいものがありますから、ぜひ。
この近くに場所があります。僕の作業所デス」と。
Cafe verdeを執拗に勧めてくるし、すごく感じのいい人だったので
話をしながら彼の作業所に行くことに。
茶色の砂が舞う路地を幾重にも通りつつ
彼の車椅子のペースに合わせてゆっくりゆっくりおしゃべりしていた。
彼は足が悪くて車椅子無しには歩けないこと。
モプティの障害者支援の作業所で、軽作業をしながらそれで生計を立てていることなど。
私はこの間行ったドゴンの国のこと。断崖絶壁でシュラフで寝たことなどを喋っていた。
彼は日本ってどんなところなの?
教えて!とキラキラした目で言ってくる。
「食べ物美味しいけどー通勤ラッシュとかやばくて、しんどいよー。まあ
何が幸せかわかんなくなってくるよねー」とまだ20台で斜に構えていた私は
話したと思う。
彼は「すごく美味しいCafe Verdeだから味わって飲んでね。
僕、これが大好きなんだよ」と、温かい1杯をご馳走してくれた。
この香り・・・この味・・・
それは緑茶だった。
「・・これって!!!もしかして日本の????」
と私。
彼は「そう、そうなの。Cafe Verdeとても美味しいよ。僕、これが大好きで
君を見たときに一緒に飲みたいと思ったんだよ。よかった!楽しかった!」
と。
車椅子の彼は、Cafe Verdeがとーっても大好きなので
滅多に入ってこないこれがお店に入って来たら絶対に買うこと。
そしてとっておきのティータイムの時にいただくとのこと。
なんだかもう胸がいっぱいになった。
そろそろ宿に帰らないとみんなが心配しそうな時間になったので
お別れの挨拶をする時に、これは代金を置いて言ったほうがいいのか?
代金じゃなくてもこの作業所に何か募金箱的なものがあれば入れて言ったほうが
いいんじゃないか?みんながここを続けて暮らすために何か渡したい、と思って
財布をもそもそ出そうとしていると
「お金なんていらないよ。僕は今日のティータイムにお誘いしただけだからね。
だって僕はね、毎日同じメンバーだから刺激がなくてしょうがない。今日は楽しかったよ」
とにっこり笑ってくれたんだ。

もうその後、恥ずかしいくらいモプティの路地を泣きながら帰った。
アフリカでお金をせびられすぎたせいか、100%彼の好意を最後まで信じられなかった自分がいて、なおかつ、その心を見破られていて、なおかつ彼の心が美しすぎて、とんでもなく恥ずかしかったのです。
モプティで、何よりも一番覚えている、ご馳走の味です。